松蔭だより

2019年9月3日 発行
松蔭中学校・高等学校
校長 浅井 宣光

     

      校長から保護者の皆さまへのメッセージです。       

       

 

実にキリストは私たちの平和であります。二つのものを一つにし、ご自分の肉において敵意という「隔(へだ)ての壁」を取り壊し、規則と戒律ずくめの律法を廃棄されました。(エフェソの信徒への手紙2:14〜15)

夏休みの活動などから
 8月下旬の学校周辺では、イノシシが頻繁に出没していました。かわいらしい瓜坊(うりぼう。子供のイノシシ)連れのお母さんイノシシですが、昨年秋頃から急に、正門前の道路などに姿を見せるようになりました。気候変動による環境変化の影響がここにもあるように感じます。9月に入り、ようやく過ごしやすくなりました。2学期は最も長い学期で、体育祭、修学旅行、バザーなどの行事や進路、進級関係の手続きなどが次々と目の前に迫ってきます。生徒、教職員ともにオーバーワーク気味となる学期ですが、着実にこなしていきたいものです。悩みを抱えていたり、困りごとがあれば、近くにいる信頼できる大人に相談する勇気を持つよう伝えています。
 夏休み中に全国大会に出場したクラブでは、放送部がNHK杯全国高校放送コンテストに出場し、ラジオドキュメント部門で番組「耳虫(イヤーワーム)」が優良賞、テレビドキュメント部門で番組「制服のハラスメンター」が入選となりました。個人部門では、朗読部門に高3の田中ゆきさんが出場しました。NHK杯全国中学校放送コンテストのテレビ番組部門では、「中一保護法」が優良賞を受賞しました。アーチェリー部は、中3の杉本歩美さんが第14回全日本小学生中学生アーチェリー選手権大会に出場しました。
 8月6日、広島は74回目の原爆の日を迎え、日本聖公会の「広島平和礼拝2019」には10名の松蔭生が参加しました。中3では1学期に平和学習の一環として兵庫県原爆被害者団体協議会理事長、岡邊好子(おかべよしこ)さんから被爆体験を聴きましたが、今回は岡邊さんの母校、広島女学院の生徒とともに核廃絶署名運動を行いました。また、聖公会関係学校のプール学院、神戸国際大学付属の生徒とともに、「ヒロシマを語り継ぐ教師の会」の杉山武郎(すぎやまたけお)さんから被爆体験を聴きました。杉山さんは旧制崇徳中学校3年の時に、岡邊さんと同じように自宅で被爆し家族を失いました。13万人の犠牲者一人ひとりに家族とそれぞれの日常生活があったことをあらためて思います。10月には中3修学旅行でもう一つの被爆地長崎を訪問する予定です。
 海外研修、異文化研修では、ニュージーランドのセントピーターズスクールでの短期語学研修に12名の高校1年生が参加しました。海外渡航の経験があった生徒も初めての生徒も、2週間のホームステイ体験で各自が勇気と自信を手に帰国しました。韓国の信明高校・聖明女子中学校への異文化体験研修については、8月上旬に信明高校側より、慎重に協議したいとの連絡を受けました。釜山(プサン)での2日間のプログラムもあり、外務省が渡航の注意喚起の対象都市としていることなどから、今夏は派遣を見送ることを決定しました。信明高校、聖明女子中学校ともにクリスチャンスクールです。両校の校長先生方との間で、神様のみ心に見守っていただきながら生徒交流の再開を必ず果たそうと約束しました。冒頭の聖句にある「隔ての壁」は現実にありますが、それを乗り越えるために松蔭が神様に選ばれました。未来への希望を持ちたいと考えています。

全国の女子高生が集うBlue Earth Project全国活動報告会
 先日、オーストラリアのグレート・バリア・リーフがTV番組で取り上げられていました。このサンゴ礁は地球最大の生命体と言われ、1981年ユネスコ(UNESCO:国連教育科学文化機関)世界自然遺産にも登録されています。ところが、近年の気候変動による海水温の上昇のためにサンゴの白化が起こり、状態は年々悪化しているそうです。ユネスコは、自然災害や都市開発などで危機にさらされている世界遺産を危機遺産(World Heritage in Danger)としてリストアップしています。グレート・バリア・リーフがこのリストに加わるや否やで、オーストラリア政府とユネスコが対立しているというニュースもありましたが、美しいサンゴの海の映像は強く目に焼き付いています。
 昨年、一昨年のBlue Earth Projectは、海洋環境の生物多様性、なかでもサンゴ礁保全に取り組んできましたので、待ち遠しい気持ちで8月25日の報告会当日を迎えました。会場には、北は札幌開成中等教育学校から南は沖縄県うるま市の具志川高校まで全国11校、松蔭生を含めて120名の女子高生のほか、NPO法人を立ち上げたOG、松蔭中生や関係者、一般の方など300名が参加 しました。講堂では2時間にわたって各校代表による パネルディスカッション(右写真)や、OGからの報告 が行われました。また、22の啓発ブースと特設ステージでは各校の生徒アピールが行われました。昼食には、 学校の食堂の職員の方と相談したメニューが用意されました。参加された方々は、環境問題について知識を 深めたり、啓発グッズ作るとともに、次のように女子高生の行動力に感心しておられました。
 「在校生が自分の意見を発信する姿を見て、社会に貢献する女性をしっかりと松蔭が育ててくれていることをあらためて誇らしく思う。」(卒業生) 「ふつうの女子高生にこれだけのことが出来るのですね。ということは、私たちふつうの大人にも出来るということです。」(須磨水族園職員) 当日配布された活動報告書冊子『Blue Earth Projectのキセキ』には、国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)との関連を説明 しています。SDGsには17のゴール(目標)と169のターゲット(取り組みや手段)が設定され、地球上の誰一人として取り残さないことを誓っています。Blue Earth Projectはエ ネルギーや気候変動、環境保全、食糧問題など、すでに幾 つかのSDGsゴールとターゲットを扱ってきました。今後は、 他のゴールにも対象を広げて、松蔭の教育活動に組み込ん でいくことを考えています。

勇気をもって行動すること
 米国に暮らす日本人女性記者が次のような記事を書いていました。多くの日本人女性は「自信がない病」にかかっている。男性に囲まれた職場や社会で先が見えず、将来像も描けない。相談する人もいない女性は「どうせ私は」という思考回路におちいりやすく、女性どうしで話すと「私も」「私も」ということになる。これは日本だけでなく、米国の30~40代のキャリア女性と話しても同様で、これからの時代には、職場でも地域でも家庭でも、「私は私」と自分に自信をもって委縮せずに自然体で生きていきたいものだ、と訴えていました。また、若手女性起業家へのインタビューでは、「今の若者世代は、目標を持って前向きに仕事をしている人が少ない。学校教育や社員教育で必要なことは、『今これがやりたい』という気持ちを尊重して勇気を持たせ、のびのびとチャレンジさせることだ」と語っていました。校長室だよりには、これまでにも「勇気や自信」をテーマに小文を掲載してきましたが、これらが特に女子の中高生の成長の課題のひとつであると考えているからです。日本の若者は自己肯定感が諸外国と比較して低く、特に女子ではその傾向が顕著だといわれています。「ファーストペンギン」として声をあげ、行動することは、日本で、しかも女子中高生にとってはハードルが高いものです。
 先の報告会当日もこれまでのBlue Earth Projectでも、「課題」「場」「時間」の枠組みを提示された女子高生たちが、「今やりたい」ことに「自由にのびのび」と取り組む姿がありました。パネルディスカッションでは、各校の生徒たちが勇気を持って活動に踏み出した経緯を語っていました。あるOGは、引っ込み思案で先生方も自分の声を聞いたことはほとんどなかったろうと語り、Blue Earth Projectに取り組むことで勇気を持ち、行動し、自信を得たと語っていました。NPOを立ち上げて活動を継続した別のOGは、高校時代と違い、活動資金をどのように得るかという問題に直面したが、様々な工夫を考え実現した経験を話しました。彼女たちは、勇気を持って行動することを通じて自信を育んでいきました。さらに気付きと学びを積み重ねて、経験にもとづく豊かな知恵を自らの内に蓄えました。このことを再確認した報告会でした。
 昨年秋から、スウェ―デンの高校生グレタ・トゥンベリさんの行動がメディアやSNSで話題となっています。毎週金曜日には学校を休んで国会議事堂に行き、「気候変動のためのストライキ(Strike for Climate)」というプラカードを掲げました。彼女は今や、世界に影響を及ぼす若者としてノーベル平和賞に推されたと報じられています。彼女を突き動かした行動する勇気のきっかけが、彼女の気質なのか環境に対する問題意識なのかわかりませんが、その行動によって自信が育まれ、さらに次の行動へとつながっていることは間違いありません。グレタさんも日本の女子高生も、環境問題と、女性が勇気を持って行動することの大切さを示してくれているようです。「隔ての壁」のない、世界共通の課題が生徒の前にあります。

今年も「六甲ミーツ・アート」に出展
 今年も「六甲ミーツ・アート」に出展 六甲山上の各施設で、11会場を舞台に開催される現代アートの展覧会「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2019」に今年も美術部が出展します。今年は作品「ハッピー・ソフトクリーム」で生徒パーフォーマンスも行います。3年連続でプロの芸術家に交っての活動です。ぜひ見学にお越しください。期間は、2019年9月13日(金)~11月24日(日)。会場は六甲山カンツリーハウスです。

 2学期行事予定表(生徒用は始業式に配布しています。)