卒業生からのメッセージ

神戸大学国際文化学研究科・准教授
池上裕子さん


企画にかかわったInternational Pop展にて
Walker Art Center, 2015年4月
松蔭の皆さん、こんにちは。私は44回生で、1992年に松蔭を卒業しています。

2015年の2月に、なんと卒業後23年目にして初めてという同窓会に出席して、とても久しぶりに母校を訪れました。20年以上会っていない人でも、顔を見ればすぐに名前が出てくる。同じクラスになったことがない人でも、「元気〜?」と言って、手を握ってくれる。やはり6年一緒に過ごしたというのは、すごい絆なんですね。専業主婦の人も、バリバリ仕事している人も、シングルマザーも、色んな立場の人がいたけれど、みんな生きるエネルギーに満ちあふれていて、お互いを認め合っていて、本当に感動しました(幹事さんたちに感謝!!)。

在学中はあまり意識していなかったけれど、「オープン・ハート」ってこのことなんだなと、あらためて松蔭に通っていたことを誇らしく思いました。そして、あるがままの私たちを認めて、見守ってくださっていた先生方にも、あらためて感謝の念を深くしました。私たちの学年はとてもやんちゃで、学年主任だったK先生を始め、先生方には本当にご苦労をおかけしたのです。44回生を代表して、先生方に「ごめんなさい」と「ありがとうございました」とお伝えしたいです。

実をいうと、私は松蔭にいた頃は、「早くここから出たい」と思っていたんです。同級生とうまくつきあえず、学校に行きたくないときもあったし、私自身も気が強くて、あまり人の気持ちを思いやれない子どもでした。でも、クラブ活動を通して良いお友達ができましたし、東京の大学に進学するという目標を決めてからは、人目を気にせず受験勉強に打ち込みました。そんな私を、先生方だけでなく、同級生のみんなも応援してくれて、国際基督教大学に合格したときは一緒に喜んでくれたんです。

その後、美術史という学問の面白さに目覚めて、大阪大学の大学院に進学。さらに専門的に勉強するためにイェール大学に留学し、戦後アメリカ美術に関する研究で博士号を取得、アメリカで本も出版しました。一つのことを究めるのは、とてもしんどいのですが、同時にとても楽しく、やりがいがあります。2010年から勤める神戸大学では、現代アートの面白さを伝えるべく、ゼミや講義などを受け持っています。国際シンポジウムで発表したり、展覧会の企画にかかわったりすることも、研究者という仕事についた醍醐味です。

これを読んでいる皆さんも、楽しい学校生活を送っている人ばかりではないかもしれません。卒業してからも、さまざまなチャレンジがあるでしょう。でも、本当に好きなことを見つけた人は、強いです。自由で寛容な校風の松蔭にいる間に、できるだけ色んな経験をして、自分は何に興味があるのか、何が好きなのかを探してみてください。必ずしも進学や仕事に結びつかなくても、それはきっと、あなたの人生を豊かにしてくれます。一卒業生として、皆さんのことを応援しています。

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